碧空1272 MOON WALK190(つがい形成の、その献身の隠喩も同然)
1272 MOON WALK190(つがい形成の、その献身の隠喩も同然)
流浪の芸人リリウィンは、乱暴にも殆ど婚礼の場に居合わせたというだけでウォールター・オーリファーヴァーの盗まれた銀貨のことで疑われるどころか、その、恵まれない如何わしい身分故にあるいは単に排外的空気からか、それとも罪が他の誰かの身体に顕れることで度忘れしていられるからか、リンチへの異様な熱狂に狩り立てられ、ぎりぎり追い詰められさえする。(「The Sanctuary Sparrow」E.Peters)
行かず後家になり果てる境遇に耐えるように強いられた上に弟ダニエルの婚姻で一家を切り盛りする立場さえ危ういものになった最早決して若くはないスザンナ・オーリファーヴァーと、オーリファーヴァー家の半地下にひっそり身を潜める雇われ金細工師イースティンとが人知れぬ間に呼び合ったつがい形成は、不遇を婚姻色として間に合わせた献身であるが、客観に転写されて、他の誰かになるまで器官を延長して犯人一体を二人で演じて器官の不足を埋め合わせ、庇い合う双子のトリックに変装するのである。この二人同体のトリックが一気に解ける逃亡は、他の誰かになるまで器官が延長しなくなって正体を現わすために、俄然ラニルトを驚かせる。それは、リリウィンとラニルトとが呼び合うつがい形成が客観に転写されて、ラニルトが疑うのではなく誤る危険を冒すこととしてスザンナと渾然一体だったリリウィンが、俄然イースティンの相貌を見せて現われ出たようなものであるが、この、不遇を婚姻色とした二組のつがい形成は、つがい形成のSanctuary を蜃気楼にしてしまう。
つがい形成はスズメのようによく知られているが、スズメのように見馴れているというに過ぎない。そもそも誰のつがい形成なのか分からないために、つまり別の誰かのつがい形成のようで個を脅かすために誰の婚姻なのか規定し、拘束しようと足掻くのであるし、違犯である姦通はまるで後発催眠暗示にかかっていないかのようにして後発催眠暗示にかかっていて(自由ではなく)つがい形成の、その献身の隠喩も同然なのである。


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