碧空1331 MOON WALK249(「記憶の渇き」の現像)
1331 MOON WALK249(「記憶の渇き」の現像)
「木のぼり男爵」(Italo Calvino )を襲う「記憶の渇き」が眠気のように(憂愁のように)遠い、満たされぬ思いで覆う現在は、樹上の領地の断崖として姿を現わした草原に転写されるが、この、世界の終わりのように覚醒した場所で鬱然と何かが起こるとすれば、それは、螺旋状に舞い上がってもつれ合う立羽蝶のはずだ、といった雌雄異体の気配である。
しかし、この、種の夢の霊的抽象に、個の記憶の特別な線や色や数といった抽象が干渉して屈折を惹き起こした「記憶の渇き」は、馬を襲歩させて一角獣を鎧うような貞操の、黒衣とブロンドの髪の、あの、コジモが反抗を起こした日に、あの木蓮の木のそばで出会った、ソフォニスバ・ヴィオーラ・ヴィオランテ・ドンダリーヴァを、命令することに馴れた若いが黒衣の貴婦人として、三次元に現像する。「記憶の渇き」の解明である。
しかしまた、樹上でコジモが発するどんな言葉も野鶉やヤツガシラや野雲雀やスズメの鳴き声にしかならないほどにソフォニスバ・ヴィオーラ・ヴィオランテ・ドンダリーヴァが驕慢に、特異に振る舞っても、個の記憶が種の記憶に矛盾しない範囲で間に合わせられたのであって、この三次元現像はひどく柔順なのであるが、その、個と種の摩擦に由来する放電がアースされずにコジモに落雷するのである。
それは、ソフォニスバ・ヴィオーラ・ヴィオランテ・ドンダリーヴァを襲う雷電でもあるから、乗り移って来る限りで分身するVENUS の間に合わせの三次元現像であるが放電がアースされていないソフォニスバは(打ち寄せる海のように)コジモの瞋恚の炎を共にするのである。


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