碧空1363 MOON WALK281(後れて来るMario Vargas Llosa)
1363 MOON WALK281(後れて来るMario Vargas Llosa)
グレゴール・ザムザの変身は、屋根裏部屋の奥に分け入って自分の鏡像に出くわした時、顔面の半分に身に覚えのない入れ墨が蔓植物のように獰猛に、打ち消し難くはびこっているような絶滅危惧種に変わり果て、まるで誰もいない部屋だ!というようなことである。グレゴール・ザムザの飼っているインコはグレゴール・ザムザと呼ばれているので、誰もいない部屋を呑み込んでいる鏡のようにインコが連呼するグレゴール・ザムザは、一体、グレゴール・ザムザに襲いかかる輪郭喪失に抗うのか、誰もいない部屋をなぞるのか分からない。
人類が別の惑星に探査機を送り出すのも、宇宙空間に浮かぶ別の惑星が解としての種の夢だからである。大接近して、後れて来る探査機がズーム・アップする別の惑星は、別の惑星が現実となって遊弋するために潜伏する問としての種の(絶滅を孕んだ)夢の三次元現像である。探査機が把えた別の惑星の、そのスロー・モーション再現は、後れて来る主体が分節、展開するのである。
同じようにして、アマゾンの密林のいよいよ奥地に生き延びる絶滅危惧種マチゲンガ族をドローンのように探査するサウル・スラータスの大接近は、顔面の半分が痣に覆われた仮面を疫病のようにマチゲンガ族に移して、時間を拡大するようにして分節する後れて来る主体「の」すなわち語り部「の」(主格、目的格、所有格、同格、比喩の区別がおかされた)ズーム・アップである。


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