Friday, November 09, 2018

碧空1370 MOON WALK288(不意の遠近法の崩壊)

1370 MOON WALK288(不意の遠近法の崩壊)  花鳥、例えば渡辺省亭が迫ろうとするような花鳥は、約束のしるしの覚醒に(不意の遠近法の崩壊に)迫ろうとし、迫ろうとして届かない遠近法のもどかしさをつぐなおうとするかのように約束のないしるしとなって果てしもなく増殖するのである。  花鳥の増殖は、約束のしるしの覚醒と約束のないしるしの間の断絶、激変を媒介し、約束のしるしの覚醒の、その、途中までしか来ないのにどんな現実よりも(可笑しく,あるいはものの気が)迫る半現実を埋め合わせようとするのである。しかしその、そこのない気配は、増殖の数量をいくら積み重ねても埋まらない。  ところで、静物であれ人面であれ場面や風景であれその後の何であれ、その増殖は花鳥の増殖に準ずる。不意の遠近法の崩壊に面して、戦慄や横隔膜の痙攣と同じく否応ない模写発作、あるいは転移発作的な反復である。というのも、不意の遠近法の崩壊を痙攣的に模写しようとして、直接性を鎧った花鳥や静物の模写を以て間に合わせるように転移は強迫的だからである。  そこでは、模写発作と転移発作の区別が堪えられていないが、それは、約束のしるしと約束のないしるしの区別も堪えられていないのである。

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