碧空1375 MOON WALK293(盗まれた記憶が迫る)
1375 MOON WALK293(盗まれた記憶が迫る)
「財産とは、他の誰かから盗んだもの」だとすれば、記憶も他の誰かから盗んだものなのである。
フローラの記憶にモラルがかかっている限りで、疲れを知らない「本物の男」を見た記憶は、フローラが聞いた話(の中の「本物の男」)やフローラが見た(「本物の男」の)肖像と混同されて迫ることも含めて、誠実や正当性や(その変態に過ぎない)真性といった妥当要求に反応して真に迫るのであるが、盗まれた記憶が迫るのは、後れて来る深い暗示となって迫るのである。
フローラが本当に見た「本物の男」の肉薄は、そのようにして個を超え出る真空の気であるが、命なのである。
つまり、本当かどうか、本物かどうかを、妥当要求が迫るのではなく(妥当要求に迫られて目を凝らすのではなく)、種の夢(命)であるかどうか、ゴーストがかかっているかどうか、すなわち、それは救世主や鶴女房のように、見てはならない(見たことにはならない)盗まれた記憶が迫るのである。


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