Sunday, March 03, 2019

碧空1446 MOON WALK364(物語の虚脱、物語の瘢痕)

1446 MOON WALK364(物語の虚脱、物語の瘢痕)  耳なし芳一のfugue (夢中遊行的失踪)のスリルは、芳一が制御不能に琵琶を奏でる、平家蟹の甲羅の、その人面瘡の腹話術に夜な夜な呼び出されて躱せないのである。芳一が引きずり込まれるように琵琶を弾き鳴らして平家の陣営を呼び出す、その「思いがけない景色をみて和蘭陀に流される」深淵の断面は、「LITTLE NURSE」(Mentholatum )の如く、全体が部分の振りをすると同時に部分は全体のように振る舞う。  耳なし芳一の、その消し難い瘢痕は、過冷却状態の(解離した)現在と「過冷却状態の(解離しない)現在」の間の深淵、雌雄異体の気配と擬似半陰陽の間の断絶を媒介する記念碑である。それは、何事モナカッタカノヨウニ、マタ一日ガ始マッタ、というように分節されて物語は終わるが、その婉曲を除去すれば、物語はブラックホールに引きずり込まれて脱け出せないかのように闇に葬られる、そうした物語の虚脱であるのに、物語の野心(あるいは崇秘)であるかのように厳しく(極端に私的に齋いて)抵抗してそそり立つ瘢痕なのである。

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