碧空1451 MOON WALK369(「懐かしい里」に出る)
1451 MOON WALK369(「懐かしい里」に出る)
一体、通り魔が魅(さ)すとは、思いがけない景色だが身に覚えのない反直観的な(既視感のような)約束の気配に出るのである。この世に何か余計なもの、何か余分なものなどないかのように子供たちが危うい逢魔ヶ時に通りゃんせの手鞠唄をもの遠くうたうような「懐かしい里」(泉鏡花)に出る、瀧の裏側の隠れ里や崖に烏瓜の垂れる袋地の雀の宿に出るのである。
言葉や貨幣や地位や商標といった媒体が忽然と光り出して(木の葉が小判に、狐狸が別嬪に化けるように)物を言うのは、発信と受信の能所が解離しないで魅(ばか)すのであるが、この世のものが鎧う寿命や直しさ、自体といった擬態が解けて、媒体性が暴らさまになっても忽然と光り出す。その光は程度ではなく、後れて来る主体は本当の持ち主にはならない。約束の気配が場所となって潜伏しないで、後れて来るはずの主体が途中までしかやって来ないことが、本当の持ち主が接近すると光り出すということなのであるが、身に覚えがないのである。本当の持ち主であることが打ち消されるように、何か(憤るように)届かない。
「懐かしい里」に出ることは、決して家郷の大気に安らうことではなく、むしろ和蘭陀に流されるのである。


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