碧空1452 MOON WALK370(本「の」本)
1452 MOON WALK370(本「の」本)
約束の気配は、本の気配である。
「狂風記」(石川淳)は天動説を媒質にした誇大とも被害ともつかぬ妄想に見えるとしても、それは、神託、魔法、腹話術、推理、精神分析の系統発生を一気に(ものの気立って)通過する妄想、その粘菌性は全体や起原が部分や今の振りをすると同時に部分や今が全体や起原のように振る舞って、演繹するように管を伸ばす。とっくに終わっている幽霊船のように今を主張するのである。
狂風の記とは、本「の」本である。
本は、本が今に或る本の(疚しさのような)場所になって潜伏し、本と或る本が解離する(後れて来る主体の)記か、解離して後れて来るはずの主体が途中までしかやって来ない(身に覚えのない)約束の記かに振動する。つまり、単なる異本か、光り出すか、である。
そのようにして、思いがけない受胎告知や復活も、拈華微笑も、身に覚えのない約束の本「の」本の反復、転生なのである。


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