碧空1462 MOON WALK380(摩訶迦葉の耳、もう一つのそこひ)
1462 MOON WALK380(摩訶迦葉の耳、もう一つのそこひ)
盲目の耳なし芳一にとって「誰にも見られていないのに、隠れない」とは、思考が筒抜けになること、思考が誰にも聞こえないはずなのに聞こえてしまうのである。片方の耳の紛失は、そうした筒抜け状態から脱け出すための代償であるが、その失跡した耳こそは思考が筒抜けになっていたことの名残であって、制御不能の人面瘡の痕跡なのである。
拈華微笑は、そんなふうに思考が筒抜けになっていて、その筒抜け状態から脱け出すためには怪談の媒体である摩訶迦葉の耳は紛失するはずである。
失明の類に、不易の若さ(あるいは、時計のひどい遅れ)がある。片耳だけしか引き擦り込まれなかった琵琶法師芳一は、このもう一つの失明、不易の若さに冒される。 失踪せずにペルソナを維持してしかも若さを保持すること、歳の停止とは、知らぬまに進行している老化に対する底翳(そこひ)である。こうした内障(そこひ)が癒えるとき、瞬時にして老衰が経過するという、化身に匹敵する激変に襲われることになる。化身の苦痛、そこにいながら最も遠い次元に失われていることと何ら変わらぬ苦悶が、この逸脱に対する罰であり償いである。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home