碧空1466 MOON WALK384(目の位置異常、胃袋の位置異常あるいは器官の延長)
1466 MOON WALK384(目の位置異常、胃袋の位置異常あるいは器官の延長)
「飢餓海峡」へ駆り立てられたきっかけは、大風に煽られて一夜にして焼き払われた岩内の大火災と、洞爺丸の転覆と、その二つの阿鼻叫喚を山岳を隔てて「天地自然が貫いて眺めている不思議」だと水上は述懐している。
平安の盆地を見下ろす山から、その市井の、蛍のように密に疎に分布する野生の灯に面して顔面を襲う模写発作を、尾崎放哉が「無心」と呼んでいるのは、つまり、隠沼に面して、その忽光を惚恍を以て発作的に模写したということなのである。
漏らさぬ「天地自然」も「無心」も、世界の終わりが引き伸ばされた旅愁(空腹の旅)なのではなく、その鳥瞰の猛威は、一隅をズーム・アップする後れて来る主体が途中までしかやって来なく、途中までしかやって来ないのは場所が潜伏しないで宙に浮くのである。この、目を瞠いた「天地自然」や世界の終わりが蛍のように迫る「無心」は、見えないはずの景色が見えてしまう、あるいは見えないはずなのに見られてしまう目の位置異常で、目は口や胃袋や陰唇に移動するし、外在さえして、雌か雄かを演ずるが性の区別がおかされた擬似半陰陽の羞恥なのである。
つまり(それとも、しかし?)、目の位置異常に見えるのは胃袋の位置異常や器官の延長で、胃袋は口からさらに食指や偽足を伸ばし、歩行し、さらには性器になるまで器官を延長して(つまり、性器になって)、いや継ぎ継ぎに、少女たちが怪談、うわさ、不安の特異な媒体である如くになるのである。


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