碧空1488 MOON WALK406(ノートルダムの塔の上より、1482年)
1488 MOON WALK406(ノートルダムの塔の上より、1482年)
ノートルダムの塔の上より、1482年のパリを俯瞰すると、縦横無尽に通りは枝岐れし、絡まり合い、大理石の文様を成して、包囲する環境が大理石であるとその模様の網膜像を体表に転写して姿を消す蛙のように、というより、環境に溶け込んで姿を晦ます衝動のエラーというように、佝僂のカジモドはパリを模写して、姿を消すのではなく眼状紋のように威嚇的に目立つ。
ノートルダム大聖堂の正面の、職人の夢想を凝らした部分という部分が小さく小さく(まるで、ズーム・アップするように)縮んで一気に、殺到するように、正面全体が、さらには大聖堂の全貌が出現する。それは、夢想のような組織や器官の変形を衒奇的に継ぎ接ぎしたカジモドの顰む身体の如くであり、このカジモド式はパリの振りをし、パリはカジモド式のように振る舞う。暁の鐘声がおびただしい塔と打ち連なる屋根のおちこちで視覚に訴えて煙のように柱のように立ち昇り、響き合い、輪郭を探して膨れ上がるパリの如く、過冷却状態の(とっくに凍結しているはずの)1482年なのである。
1482年のパリはゴチック式が優越しているかに見えて、先行するロマネスク層と隣り合い、重なり合って圧し潰されたり、疣や瘤のように出っ張ったり、附加されたりして輪郭が彷徨い出し、その彷徨は、後れて来るルネサンス層の潮の侵食や沖積の予感でもある。つまり、カジモド式とは、何よりも新しく何よりも年をとった奇形が種の夢のように振る舞うしかめっ面なのである。


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