碧空1489 MOON WALK407(おかされた輪郭、輪郭の励起、輪郭の失踪)
1489 MOON WALK407(おかされた輪郭、輪郭の励起、輪郭の失踪)
横須賀線爆破事件の犯人若松善紀は、幼い頃から、水底に沈んで誰かが探しに来るのをじっと耳を澄まして待っている「衰弱体」を鎧った土方巽が、見馴れない、衒奇的な筋肉の小波を起こして輪郭を、透明になってしまっている輪郭を鞭打つ如く励起するように、屋根裏部屋に気配を消して潜んで誰かが探しに来るのを窺っているうちに環境に溶け込んでしまうのではなく、更にはまた輪郭が透明になる衝動のエラーというよりも、もう一つの(あるいは一層の)韜晦の表現として、時限爆発装置を置き去りにし、その人知れぬ片隅に瞠く目玉模様によって鞭打つ如く輪郭を励起し、天狗の隠蓑を着たような(そこにいてそこにいない)幽霊のままに顕示的になるのである。
それは、暗黒舞踏やノートルダム大聖堂の佝僂カジモドのように顕示的に遁走するのであって、危機を回避するために突如姿を消してしまうfugue のような記憶喪失ではないが、それともひょっとして、顕示的に遁走する若松とは別に、記憶喪失して途中までしかやって来ない若松が逃げおおせているのだろうか。
蔽いかける大きな顔も朝の光も欠落しているのに名を呼ぶ声は鞭打つ如く過剰な母の呼び出し(諸要請)に中毒していた若松善紀は、その中毒症状が幼馴染みの女性の諸要請に鞭打たれる如き関係に方解して、転生しているのを漠として嗅ぎつけないではいない。この、鞭打たれる如く呼び出されたがっている中毒症状の頓挫を(すなわち、輪郭の喪失を)、横須賀線は、女性を運び去ってしまうというだけで代表することになる。しかも、急にいなくなって屋根裏部屋や放浪や狩猟に身を潜め、環境に溶け込んで危機を回避しようとする擬装的遁走の、そのエラーであるかのように開いた翅に眼状紋が顕示的に瞠いたことも知らず、鞭打つ如く輪郭を励起するように屈折するのである。
時限爆破装置を仕掛ける、というよりは置き去りにすることは、放火のように輪郭喪失の無明を照らし出すだけなのに、まるで輪郭を照らし出せるとでもいうかのように輪郭を励起して後れて来る主体は顕示的であるが、アブラハムが世界の終わりに出て極端に私的に照らし出されるような輪郭の励起は、途中までしかやって来ない。つまり、通り魔に遇うような真空に出た若松がいるはずなのだが、失踪しているのである。


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