碧空1517 phantom circuit25(コゼットの舌)
1517 phantom circuit25(コゼットの舌)
恐怖政治に抵抗不能の奴隷状態にあるがまだ鈍磨や麻痺には至っていないコゼットの、しかし酷使と慢性の空腹に疲れ果て青黒く消耗して骨立った(さらには、醜い環境を模写したような)顔は、般若面のようだ。敷浪打ち寄せる浜辺に出たように、この世の光そのものといったクリスマスの市の一隅でその人形が光るのを見つけたのはコゼットなのにそれはコゼットを探しているようではなく、あるいはそれはコゼットを見たのにこれからコゼットを探すというようにして嫉妬が迫る世に、顔のないあめふらしにひそかに角が生え口が裂けるために栄養が蕩尽してしまう般若面なのである。
ところが、見知らぬ人ジャン・ヴァルジャンがその人形をコゼットにもたらす。コゼットは般若が舌を出して蛇になるように舌を突き出し、まるで胃袋に送り込もうというように獣性が顰め顔で集中する。さらにはまた、クリスマスの煖炉に置いたコゼットの木靴のなかにコゼットが見つけた金貨を、胸のポケットに入れたコゼットの舌は、だらりと下がったままになる。それはまるで、胃袋に送り込もうとして舌が脱臼したとでもいうようにエラーじみているが、萎縮した胃袋にしまい込んだのは覆い隠せない秘密の歓喜であるために、か細い小さな身体に持て余すような秘密が押し込まれた分だけ舌が押し出されて飛び出し、戻らないというふうなのだ。(「Les Miserables」V.Hugo)


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