碧空1541 phantom circuit49(遁走の昇華)
1541 phantom circuit49(遁走の昇華)
身分の精神に導かれた王国の底に沈める蛆や蛙や鼠や蠢き這い回りぞよめく地下の暗黒の勢力は、単にパリに縦横無尽に伸びる虚飾の街路の真下に街路の影のように伸び縮みして下水道が潜む、その悪疫や毒気やパリの残滓、汚穢の如くであるというだけでなく、精神を映し出した虚偽の王国が現実であるために場所となって潜伏した精神なのであるが、知らぬ間に無意識に変脱している。
恋するマリユスを担いで暗黒の下水道を前進するジャン・ヴァルジャンと呼ばれる無意識は、いつの間にかEROSに変脱して恋するマリユスと恋するコゼットの対い形成をジャン・ヴァルジャンの器官の延長のようにして運ぶだけでなく、いつの間にか良心に変脱していて、その対い形成の前進は階級の精神からの漠とした遁走(輪郭喪失)であるが、漠として下水道が伸びるのは法の精神の潜伏であるから何か追跡の気配を躱せない。末端で秩序の地表を代表するジャヴェルや地下を代表して恐喝するテナルディエが待ち伏せているはずなのである。
つまり、知らぬ間に精神が運命に変脱していて、ジャン・ヴァルジャンを器官の延長にして運ばれる(前進する)マリユス・ポンメルシーに覆いかける昏睡状態にこそ導かれて、大ポンメルシーをワーテルローから図らずも救出したテナルディエの蛇のようにいやらしい悪意は小ポンメルシーの救出にも図らずしてまつわりつくが、下水道に登場する人物の思いがけない(しかし、まるで絶対の好意のような)配置、配合が節約と感じられるのは、それが運命の媒体であるからである。
ジャン・ヴァルジャンが潜る下水道の果ての白日の気は雌雄異体の気配であり、次の世代を媒体にしてジャン・ヴァルジャンが伸びる(前進する)のは下水道が伸びる如く、それはまた履歴改竄を重ねて遁走する如く、その遁走の昇華は(現実性と媒体性と幽霊性の、その三重の位格の区別がおかされて)キリストが近づいて来るのが分かるのである。


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