Saturday, December 07, 2019

碧空1630 phantom circuit138(宙吊りの症状)

1630 phantom circuit138(宙吊りの症状)  クリスティーヌの亡き父がバイオリン演奏する「ラザロの復活」や、クリスティーヌにもいつか天上の声が降りて来ると言い遺したことが、後発催眠術の暗示のように底知れぬ予期となって潜伏し、約束の時が満ちて夜な夜な姫の枕に通って来る姥ヶ池の主のように、オペラ座の地下の主が、すなわち、声の主であることと音楽家であることと、汚辱も同然の屍肉が造形するそばから癩のように崩れる顔面の平均値としてのファントムの仮面性とを夢やうわさのように圧縮した地下の混合種が、暗示が祟るようにして肉薄する。  しかし、肉薄するが途中までしかやって来ない。クリスティーヌは、丑待ちの鏡に最初に見(られ)たものが生贄になる身代わりであるが、その、鏡に映らない何か不断の肉薄と焦燥の世俗の形式が、失踪や階級を乗り越えられない宙吊りの症状である。  サスペンスとは、「最初に」と呼ばれる間に合わせ(即興性)の範疇で、その、初めてであるはずなのに初めてではない「世界の終わり」の無意識は、偶然となって姿を現わすと同時に姿を晦ます運命というものが、従って何か決定的であるはずなのに致命的にはやって来ないという症状となって祟るのである。

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