Monday, February 10, 2020

碧空1672 nautilus15(世界の片隅の、ふしぎな振動)

1672 nautilus15(世界の片隅の、ふしぎな振動)  釘づけの磔刑の図のように、見てはならないのに何度ものぞきに戻らないではいない。それは、雷電に目が潰れてしまう恐れからか、あるいは手を挙げた踊る女性の腋の下に鱗が生えているのを見て肝を潰す恐れからか、覗き見てはならないし、目を瞑って眠ってもならないのである。  この、のぞきの話は、追走する大蛇の瞋恚の炎で釣鐘ごと抱き竦められた若僧が何と一滴の露に化す「道成寺」に、あるいは生垣越しにのぞき見た野辺の若草(紫)がいつの間にか女性に変態する、そのmetamorphosis に想到して勃起してしまう光源氏の夢想に、あるいは沼の主などの異類との約束から最初に目にした娘を差し出すことになる(あるいは夜な夜な姫の枕元に通って来ることになる)供犠に、屈折、反転、変形していく。  結局、というより初めから、この窃視とは、個が終わるところで極端に個になって個と種が解離しない絶対速度の気配の鸚鵡貝の目がのぞく、世界の片隅の、ふしぎな振動なのである。

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