碧空1710 nautilus53(秘密の終わりに出るmysterium)
1710 nautilus53(秘密の終わりに出るmysterium)
「私」でなくなる遠方に「私」でなくなる死体、俄然我に返るかの如くに「私」でなくなる世界が潜む。
ミステリは死体の発見から始まるが、それは「私」でなくなる死体の極一部の夢のような表出であるから、ミステリは「私」ではなくなる冒険の始まりを記憶喪失のように暗示するに過ぎない。究極の、渾身の冒険は、二番目の、さらには次々と死体を探さないではいられない(しかも死体探しが発作的に犯人探しに転移してしまうような)強迫症状ではなく、死体の終わりに出て疚しさが終わる真すなわち隠れなさに被曝する失踪、俄然我に返るかの如き失踪なのである。
「私」ではなくなる冒険は、後れて来る「私」の遠近法を媒質とした伝達や到達、記憶といった錯覚の冒険遍歴の、それと知らず「壁に写る影」であるために、その失踪(届かなさ、過冷却の現在の、その唐突な揮発を思い知らされる痛恨)は俄然我に返るかの如くなのである。(「アメリカ」(失踪)F.Kafka)


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