碧空1713 nautilus56(誰かの息がかかる間に、影の国が息を潜める)
1713 nautilus56(誰かの息がかかる間に、影の国が息を潜める)
鏡ヶ浦ニ出ルト、浜辺ニ魚ガ上ガッテ来ルノデ投ゲ返シテヤル、スルトマタ魚ガ上ガッテ来ルノデマタ投ゲ返ス、といった悠久、敷浪が寄せ返す無量の思いも、何度ものぞきに戻らないではいない強迫が何度も魚が俄然同じ魚となって上がって来る光景に反転しているのである。
記憶喪失の如く俄然我に返る如く、生贄なのか救済なのか区別がおかされ、呼び出されているのか取り消されているのか区別がつかない、そんなふうに誰かの息がかかる間に、「私」なしで済ますような、偶然や個や、悪や偽や症状にならずに済むような影の国が息を潜める。極端に私的なものが極端に私的でなくなるように贖う擬似救済である。それはElpis と呼ばれる、というよりElpis となって呼び出される。こうして、エルピスの感染の諸形式、すなわち運命譚や魔法譚や幽霊譚、ミステリや精神分析は言葉や貨幣のように振る舞い、うわさのように漂うのである。


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