Monday, June 08, 2020

碧空1763 nautilus106(奇形の時間)

1763 nautilus106(奇形の時間)  誰もいない部屋を呑み込んだ鏡に映る次の世代を何度ものぞきに戻らないではいない「禁止と誘惑の図式」の一つの解は、奇形としての個に迫ろうとして偽に出てしまう。  イサクが双子のエサウとヤコブを識別できなかったのは齢が邁んで目がくもっていたからだとされ、ヤコブが初夜に番うはずの妹ラケルではなく姉レアが床入りしていたのに気づかなかったのは夜の闇の中だったからだとされるが、そうではなく、Elpis に罹ったが個に迫らぬ間に偽に変脱したのである。それは、遠近法の精度が低いとか寛大に過ぎる錯誤というのではなく、Elpis の変装の寿命が極端に短かくて奇形の時間がかかるということなのである。  Elpis 「の」伝達の、その即興的表現は、奇形に出る異化(命令を忘れないように忘れる亡命)ではあるが、後れて来る主体が範疇や代表の技術を振るえばElpis は催奇形性を隠して時間がかかる。しかし、個でないように個になるtwice-toldの気分が迫れば(ギョッとすることに)誰もがラケルになる(まるで真実が複数あるというような)奇形の時間がかかるし、具体にならない焦燥の気分が迫れば誰もラケルにならない(まるで真実が一つもないというような)奇形の時間がかかる。  ヤコブの抱える双子の葛藤は、長幼の序列の規定は誕生が先か後かであるが、それは双子の誕生にも当て嵌まるのか、部分が全体を代表するにしても、その、偶然先立つ個を偶然後れて来るもう一つの個が代表して何が悪いというような獰猛な懐疑、視座の転回である。奇形としての偶然に迫ろうとして偽に出てしまうのである。

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