碧空1814 nautilus157(のぞき穴を目指す畸形化)
1814 nautilus157(のぞき穴を目指す畸形化)
ボルチモア管弦楽団第一フルート奏者ラスパイネは、ハンニバル・レクター博士に捧げられた九番目の犠牲である。検死の結果、胸腺と膵臓が摘出されていたが、管弦楽団の理事長と指揮者のために博士が調理した夕餐に含まれていたとは二人は頭を振って信じないが、拒食症に罹ってしまう。
おまえも妹の肉が入ったスープを食ったんだぞ!と他の誰かの舌を通して告白するハンニバルは、それが本当であることを大声で打ち消すために、その、他の誰かの舌を封じるのではなく、この悪い記憶を、妹の遺された乳歯を通して妹の声で告白することで突然、聖別するのである。
この世のものになるために、どこかで夢のように表出するために、この二重の目的で打消されて潜伏する悍ましく忌まわしく穢らわしいハンニバル「の」亡命は、いきなり贖罪!となって起きる。
手術依存症とは何か。切開して何よりも身近で何よりも疎々しい内臓の闇を、他の誰かの腹となってのぞき込まないではいられないのか、他の誰かの目となって種々の切開を次々と受けないではいられないのか、しかしこれは別の話ではなく、「私」が起きても自明ではないことに触れているのである。
眠れる森の姫が起きても「私」は自明ではないことを、King-Kong が失神したクラリス・スターリングを抱きかかえる如くにハンニバルは抱え込んでいる。中指が2本あるハンニバルの多指症は、何か明快でうれしくなるためにのぞき穴を目指す、すなわち死者の目を目指す畸形化を、ハンニバルの二重の気配を暗示している。
(FBI 行動科学課には茶色の格子縞のカーテンが掛かっている。この、奇妙に突出して、何のための報告なのか分からない、ひどく遠近法のバランスを欠いているためか忽ち埋没する叙景は「羊たちの沈黙」(Thomas Harris )第4章に闖入している。それはまるで潜伏するハンニバルが、後れて来るはずのハンニバルが、のぞき穴を目指してこんなところに畸形化したというようだ。)


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