碧空1868 nautilus211(兎唇のマリアの失踪)
1868 nautilus211(兎唇のマリアの失踪)
「Red Dragon」(T.Harris)は、一体何の話なのか。
種の夢が一過的に「大いなる赤き竜と陽をまとう女」となった雌雄異体の気配は、聖痕と凌辱の交配である。つまり、「大いなる赤き竜と陽をまとう女」のグロテスクは、もう一つの受胎告知図であるから、「Red Dragon」の大団円は、もう一つの受胎告知図の紛失、聖痕と凌辱の交配が感じられなくなって兎唇のマリアが行方知れずになることである。
気味悪く迫るFrancis Dolarhyde を粉砕しても、というより、その潰滅こそは、兎唇のマリアがどこかこの世界の片隅となって膨れ上がって姿を晦まして、痛恨の惨事が通過したはずなのに何事もなかったかのようにまた一日が始まることなのであるが、子供たちのなかにはありふれた油蝉を気味悪がるということがあって、しかしそれは油蝉をあまり長く見詰めていると油蝉になってしまいそうだからとは思わない、あるいは、少しでも触ると触ったところから油蝉におかされて感染してしまいそうだからとは思わない、というように気味悪がって、漠として魘されるのである。


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