碧空1907 nautilus250(奇妙なエラー)
1907 nautilus250(奇妙なエラー)
不眠症とは、「私」が足先から徐々に他の誰かになっていって誰でもなくなろうとするのである。あるいは、足先から徐々に打ち寄せる波になってさらに膝から腰へ移って寄せ上がって海になっていくというふうだ。それは、病なのか疑わしいが、様々な病症、胃酸過多、胃アトニイ、乾性肋膜炎、神経衰弱、蔓性結膜炎、脳疲労などを次々と仮面にして猖獗する。結膜炎の蔓性は錯誤というより、蔓延る仮面の猖獗を前触れて慢性と夢のように融合したのである。
不眠症は、実は「私」を守護するために眠ってはいられないのに「私」というものに(自由、孤独、思考に)襲いかってしまうエラー(暴発)なのである。理知的、非凡、激越といった見せかけは不眠症の変装、打ち消された不眠症に過ぎなく、逸脱的である奇形に面して恥じる「私」の萎縮を償うために、逸脱的である異形を忌避する人々を軽蔑する「私」の拡張を以てコピーするのであるから、知らんぷりして遠巻く人々の平凡の包囲に怯えないではいない。種々の病症に何度も連れ戻されずにはいないのは、自由、孤独、思考の剥奪を回避しようとしているのに「私」でなくなる断崖に出てしまうのである。
「或る阿呆の一生」は、そうして、奇妙なエラーであるが、鸚鵡貝の目が見ひらいている。


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