碧空1908 nautilus251(深刻な誤解)
1908 nautilus251(深刻な誤解)
どの自叙伝も、その名前が「詩と真実」であるとすれば、「或る阿呆の一生」も何事もなかったかのようにまた「私」が始まるのである。
詩の源泉は、ベンヤミンに従えば、何度ものぞきに戻らないではいない鸚鵡貝の目が見ひらくようなことであるから、どの自叙伝も、驚く裂目(真偽がどうでもよくなる遠近法の崩壊)が遠近法に包まれて真に迫るのだ。
「魔笛」(Mozart)は、矛盾、葛藤、夜の女王の不眠症を超絶技巧コロラトゥーラを以てコピーして償うが、「或る阿呆の一生」は、種々の病症、不眠症の仮面を韜晦を以てコピーする。「私」をコピーしたはずなのに「私」ではなくなっていく不眠症の夜が、眠ってはならないのに眠れないと愁訴するのは、深刻な誤解である。


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