Thursday, November 19, 2020

碧空1927 nautilus270(絶対の焦燥)

1927 nautilus270(絶対の焦燥)  「青年」(鴎外)が、坂井夫人のまじないに罹ってふらふら箱根に来なければ知ることにならなかった虚を突く光景、(本当に)いらっしゃったのね!と薄笑いしているような光景を見て、退嬰的に抵抗するのは、むしろ後れて来る「私」の回復である。  真偽が気になる遠近法に包まれた光景が、真であれ偽であれ遠近法に包まれている限り偽りであることを、知ッテイテモ知ラナクテモ、この、後れて来る「私」は免れ得ない。「私」は漠として不快になる。  後れて来る「私」を包む遠近法は真偽が気になるが、後れて来るはずなのに途中までしかやって来ない「私」は本当の持ち主であるかどうかがひどく気になる。  「私」に出て来た坂井夫人の顔は、「私」に出て来た少女お勝の顔に夢ノヨウニ変わる。脅かすようでいて守護する!気配の、二つの解である。それは変に光り出して本当の持ち主の接近を告げているのに本当の持ち主ではない「私」は、少年から青年へ生長し続けているはずなのに寸毫も前進していない。致命的な遠方は、程度としての遠方ではない。遠方と夜が出会う、絶対の焦燥である。

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