Saturday, November 21, 2020

碧空1929 nautilus272(彷徨を償うようにコピーして世界は広がる)

1929 nautilus272(彷徨を償うようにコピーして世界は広がる)  ヴェツラーとレーゲンスブルクへ、さらにヴィーンへ、ついでそこからイタリアへ、しかしその前にパリへ、それがゲーテの父がゲーテのために思い描く青年時代の行路であるが、謙作の「暗夜行路」は染井から巣鴨へ出て、上野か銀座か迷うが仲の町の芸者登喜子のいる方へ、西緑へ傾く、三ノ輪、人形町行きの電車に乗って、乗り換えの車坂、小伝馬町、日本橋、銀座通りを清賓亭へ、そして再び西緑へ、どう拡張して地理的に霧の中を、あるいは衒奇的付加物を身につけることで、あるいは素描の蒐集に憑かれて、あるいは「私」を何度ものぞきに戻らないではいないように彷徨おうと、「日暮れ前に点ぼされている磨りガラスの軒燈の橙色の灯」のような漠とした焦燥に蔽いかけられて異性を探している。  その彷徨に感応して、彷徨を償うようにコピーして世界は広がる。

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