碧空1841 nautilus283(世界を折檻する)
1841 nautilus283(世界を折檻する)
二人静の如く二重になる直子を折檻するも同然の謙作の癇癪は、打ち消された不純が直子の姿を借りる夢のような表出が頑固に迫って魘されるのである。
「暗夜行路」の道しるべのように突発する癇癪が打擲しないではいられない不純が、山陰で見た双鷲図にも転写されて居座っていて、それは、つけ狙うように、謙作が山陰に行く「ために」、起こる。岩上の雌鷲が脚を縮め、両翼を開き、背を低め首をうしろへ捩って、上の岩から傲然と見下ろす雄鷲を見上げる、その露骨な姿態は二重になる白拍子のようで、雄鷲がどんなに傲然として雌鷲がどう柔順で何をされてもいいというようであっても、雄鷲は間に合わせでしかない。謙作の癇癪で直子を折檻しても叩き出せないのは、この、間に合わせであることを漠として強制する、どこか優越して不純な催促なのだ。
しかも、謙作の母や直子が不覚にもとってしまった雌鷲の姿態は、主体の媚態ではなく、母や直子を素材にした間に合わせの(即興の)演奏でしかない。謙作は、一体誰を折檻しているのか分からない。


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