Saturday, December 05, 2020

碧空1843 nautilus285(打ち寄せる敷浪を折檻する)

1843 nautilus285(打ち寄せる敷浪を折檻する)  「暗夜行路」を遡上してみれば、そもそも直子も、謙作が行く「ために」起こるのである。後れて来る主体ののぞき穴に偶然に現われたかのようであるが、つけ狙うように、しかも敷浪の打ち寄せる如くなのである。恋はのぞき穴の主体が異常接近するからではなく、光り出す異性の本当の持ち主の異常接近とは、のぞき穴と輪郭の区別がおかされた「私」の衰弱なのである。  長い不在の間に、遠洋に出ている間や参勤交替で江戸へ出ている間に、残された雌鷲に(残されたというだけでそれが露骨な姿態になってしまう雌鷲に)一体何が起こるか、疑念が入り込むのは雌鷲が敷浪の打ち寄せる如くなのである。  この露骨な姿態を折檻して白狐を叩き出そうとするのは後れて来る主体であるが、それは打ち寄せる敷浪を折檻するようなものである。

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