Saturday, January 09, 2021

碧空1877 nautilus319(種の如く所有る瞬間)

1877 nautilus319(種の如く所有る瞬間)  ドレスデンの町外れにある靴屋に若き日のゲーテが足を踏み入れたとき、目の前に、先刻画廊で目にしたばかりのアドリアン・ヴァン・オスターデの絵画から「ものの配置、光と影、茶がかった色調、部分と全体の調和」がそっくり抜け出しているのを見る。  この、現実が魔法がかる瞬間は、ルンゲ警部を導いて来た手掛かりの絵葉書の、そのルーエンハイムの町が描写されたのと同じ崖上から、隠沼のように、大気が水になったように沈める家並みを見降ろす、あの次元跳躍の瞬間であるし、或る世界が種の如く所有る瞬間である。それは、その瞬間のために世界が終わってしまうような浪費であるが、そのような瞬間がどうして自明だろうか。

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