碧空1932 nautilus374(運命ノ暗示に罹る)
1932 nautilus374(運命ノ暗示に罹る)
「山本五十六」(阿川弘之)は、遠近法が座礁する極端に私的な片隅としての山本五十六に遠近法を以て、死体のように公的な片隅として迫ろうとする。
「雪中の猟師」がのぞき降ろす崖下の里の如き山本五十六の、その運命「の」暗示を、欧州で第二次大戦が勃発したのと山本五十六が聯合艦隊司令長官に着任したのとが同じ日であったこととするのは、その「の」が対格であって刺客は地上からやって来るが、同格であるならば刺客は何処とも知れぬ内奥の予期である。どんな暗示に山本五十六は罹っているのか。
日蓮宗の三人の行者が団扇太鼓を叩いて見送るといった光景、和歌之浦を後にした聯合艦隊が潮の上に何十本もの航跡を残すといった光景は、内奥の暗示の解であるが、駆り立てると同時に滅ぼす予期としての暗示に反転して、次々と暗示と解が入れ替わって連鎖する。その、何かの間違いと感じられるplotの連鎖を遡上すれば、少なくとも奥行の片隅に運命ノ暗示が長岡藩となって潜んでいて、その暗示は星の如く山本五十六にかかっている。


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