碧空1860 nautilus401(変身麻酔)
1860 nautilus401(変身麻酔)
種が個となって出現する表現を償うようにして精神が偽となって出現する表現に変脱する様子が、次のようなゲーテに窺える。
1 フリーデリーケとの別離の小径で、馬上のゲーテは、もう一人のゲーテがそれまで着たことのない金色がかった灰青色の衣服を纏って同じ道を馬に乗ってゲーテの方へ向かって来るのを見る。
それは、とっくに始まっている八年後の情景が過冷却状態の現在に闖入してしまう交差、見知らぬ金色がかった灰青色の衣服を纏っているDoppelgaegerの症状は偽である。というのも、それは極端に私的なのに(そうはあるまいとして)鏡像や死体の如く足掻くからである。
2 マンハイムの古代美術館の、陳列室に薄気味悪く犇めく彫像群を擦り抜けるように、押し分けるようにしてゲーテは進む。
それら群がる彫像の動作の凍結は単なるストップ・モーションや瞬間などではなく、過冷却状態の現在を模写していて、しかし枯葉が一枚落ちるほどの衝撃で一気に動き出して過ぎ去るのではなく、動作の凍結を以て模写された過冷却状態の現在のただなかに、もう一つの現在が踏み込んで来るが、過冷却状態の現在を模写する気に冒されて彫像に劇的に変態していく、しかしそれとは分からない若き日のゲーテの変身麻酔のようなスロー・モーションを纏った硬直の予感は、そうした、もう一つの時間との交差に身震いするのである。


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