碧空1941 nautilus482(半具体のA.J.Brown、その出現と流通)
1941 nautilus482(半具体のA.J.Brown、その出現と流通)
山椒太夫は安寿と厨子王に対して隣人が献身的に現われたのであるが、この隣人は安寿と厨子王の器官の延長となって、一つになるために半分になる媒体(献身)を償うようにコピーしている。
つまり、山椒太夫に隣人が献身的に現われることは、献身を償うようにコピーして被写体を抹消するのであるが抹消したことにならない。被写体は消滅するのではなく、潜伏するのである。
「それはアンスル・ボルンという30歳の巡回牧師で、ある日(1887年1月17日)彼は銀行から551 ドルの預金をおろし、突然グリーンから失踪、2ヶ月の間行方不明であった。この間彼はA.J.Brownと名乗ってペンシルベニアのノーリスタウンで小さな雑貨店を切りまわし、仕入れ万端を立派にやっていた。しかもこうした仕事はそれまでに一度もやったことがなかった。1887年3月14日、彼は突然覚醒して家に戻ったが、その間のことは完全に忘れていた」
A.J.Brown はアンスル・ボルンに対して隣人が献身的に現われたのである。アンスル・ボルンは消滅するのではなく潜伏してA.J.Brown の影の如くであるが、A.J.Brown こそはアンスル・ボルンを複写した影の受肉である。それは、アンスル・ボルンに献身が現われる次元跳躍ではないが、そうした次元跳躍を償うようにコピーした分身(器官の延長)が、献身的に隣人の現われたA.J.Brown なのである。
それは、言葉や貨幣のように伝わって流通する半具体である。A.J.Brown は言葉や貨幣のように役に立つ。アンスル・ボルンの記憶喪失と失踪とA.J.Brown の出現は、言葉や貨幣のような媒体がどのように出現するかを暗示している。


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