碧空1956 nautilus507(焦燥の顕在化、その変容、山のかなたの見知らぬ町)
1956 nautilus507(焦燥の顕在化、その変容、山のかなたの見知らぬ町)
「それはアンスル・ボルンという30歳の巡回牧師で、ある日(1887年1月17日)彼は銀行から551 ドルの預金をおろし、突然グリーンから失踪、2ヶ月の間行方不明であった。この間彼はA.J.Brownと名乗ってペンシルベニアのノーリスタウンで小さな雑貨店を切りまわし、仕入れ万端を立派にやっていた。しかもこうした仕事はそれまでに一度もやったことがなかった。1887年3月14日、彼は突然覚醒して家に戻ったが、その間のことは完全に忘れていた」
アンスル・ボルンは、同一のものが同種のものの振りをする「私」の如く、A.J.Brown は真実にはならないが嘘ではない一回限りの言霊の如く、幽霊の如くして、アンスル・ボルンの突然の覚醒がA.J.Brown の突然の失踪に優越する、というのではない。ボルンはBrown の影法師に変脱するが、この変脱は反転する。
Brown がボルンの影法師に反転して、ボルンは突然覚醒するのである。この、ボルンの突然の覚醒は、Brown が疾しさとなって突然失踪するのであるが、この疾しさがボルンの起こる場所である。しかしそれは、グリーンのことではなく、むしろノーリスタウンに近い。ノーリスタウンはボルンの後れて来る場所が顕在化した、その変容、山のかなたの見知らぬ町だからである。しかし、ボルンがノーリスタウンに姿を現わす何かずっと手前のどこかでBrown に乗っ取られているのである。
これは、贖罪だろうか、救済だろうか。


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