Thursday, September 02, 2021

碧空2008 nautilus559(好奇心を駆る不安の転写)

2008 nautilus559(好奇心を駆る不安の転写)  進化の分岐を遡上する0の膨張、すなわち、のぞき穴は、その能所が解離しない。のぞかれる鶴女房が、のぞくのである。山幸彦が、豊玉毘賣の産む時に臨んでは本つ国の形に化って産むから産殿をナミタマヒソと禁止したのに(というより禁止したからこそ)おぞましい八尋鮫(わに)が蛇のごとく腹這うのを見てしまうのも、豊玉毘賣がのぞくのである。  この、異類に転写された、同一のものではなくなっていく不安とのぞき穴を、山幸彦と豊玉毘賣は分け合うのであるが、この、異類に転写された不安は、あの、山幸彦が見失った「正本の釣針」にも転写されていて、伝わらない秘密の保存が反復するような奇妙な命令である。  山幸彦をなやませたのは、海幸彦の主張する「正本の釣針」を同種の釣針を以てしてはいくら数をそろえても償えないことであるが、「正本」とやらは極端に具体過ぎて、しかもその正体は種の如く予定調和的で誰も証明できない全体を部分が代表して如何わしい。つまり、海幸彦の声帯を通して届く声は、同一のものではなくなっていく不安なのである。

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