碧空2057 nautilus608(土人は静かに一歩も進んでいない)
2057 nautilus608(土人は静かに一歩も進んでいない)
ヴィルヘルム・マイスター(の修行時代」Goethe )と褐色になって流れ漂う竪琴弾きの老人との関係は独白的対話であるが、「黒い霊」の追跡に罹った老人は誰でもない!というより、誰もいない!象の如く軽やかに(しかし褐色になって)漂う老人は、場所(となって潜伏した「黒い霊」)のもう一つのエネルギー状態(位格)であるから、場所の浮上は、老人を占拠する「私」を打ち消してしまう。この、i am「there are none」が、ストップ・モーションと失踪の間の振動である。
「私」が「私」のものではないかのように「黒い霊」が追跡して来て、ギョッとするように「私」を掴まえようとするので、疾駆して足掻くがスロー・モーションにしかならないし、ストップ・モーションに極まる。
二時間もつづいて炎天下でアフリカ大平原を横ぎった後、土人は静かにタアル語で言った。
「長い間、お尋ねしようと思っていたのです。あなたが独りでこのような草原におられ、そして太陽がかように草むらの上を照らすとき、何ものかが話すように思われたことはありませんか。私が言うのは耳で聞こえるものではなしに、あなたが小さく非常に小さく、他の方が非常に大きくなるように思われるものです」
二時間もつづいて炎天下でアフリカ大平原を横ぎった後、土人は静かに(小さく非常に小さく)一歩も進んでいない。


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