碧空2146 nautilus697(羞恥と畏怖の萌芽が漏らす奇蹟)
2146 nautilus697(羞恥と畏怖の萌芽が漏らす奇蹟)
誰も気づかない奇蹟は、起こっていない。見捨てられた物体となって釘づけの磔刑の十字上に姿を現わす、あの野心を、丸呑み込みされる鼠となって長靴を穿いた猫になる奇術は、償うようにコピーしている。それは、この、凝った野心の告白であるが、羞恥と畏怖の萌芽である。
二時間もつづいて炎天下でアフリカ大平原を横ぎった後、土人は静かにタアル語で言った。
「長い間、お尋ねしようと思っていたのです。あなたが独りでこのような草原におられ、そして太陽がかように草むらの上を照らすとき、何ものかが話すように思われたことはありませんか。私が言うのは耳で聞こえるものではなしに、あなたが小さく非常に小さく、他の方が非常に大きくなるように思われるものです」
二時間もつづいて炎天下でアフリカ大平原を横ぎって(誰もいない部屋を呑み込んだ鏡と鏡像の中間を)一歩も進んでいない世界の終わりの如く、誰も気づかない奇蹟は起こっていないが、世界の終わりに出るまであと0秒の、その、0の膨張の、その、誰も気づかない奇蹟を、羞恥と畏怖の萌芽は漏らしている。


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