碧空2273 nautilus824(「媒体を通さなくてはならない宿命」1)
2273 nautilus824(「媒体を通さなくてはならない宿命」1)
トリストラムの叔父トウビーは、ナミュール包囲戦で、聖ニコラスの門の前の外壁に加えられた攻撃中に飛んで来た石の破片に鼠蹊部をおかされたのであるが、その戦闘や激情を一座の人々に話そうにも、城塞の内壁と外壁とか、斜堤と掩蔽壕とか、半月堡と三日月堡とかを混同、誤解しないように苦心しても晦渋は猖獗を極めるし、そもそも聖ニコラスの門の前の外壁といっても、マース川の岸から水どめのところまでは堤防やら排水渠やら、小川だ堰だといったものが縦横無尽に走っていて話の上で突破するのも容易ではないし、鼠蹊部に石が命中した場所を説明するにも、聖ロッシの半稜堡の突角に向かい合った塹壕の転回角のところから二百フィートほど隔たった、防弾障壁の中、といった具合なのである。
叔父トウビーの鼠蹊部に石が命中した場所に到るための実際の、あるいは叙述の奮闘は、トリストラムの受胎告知に縦横無尽に暗躍して肉薄する探求の、その「壁に写る影」にして、アノ(誰もいないはずの)二階!へ地続いている。その、アッチコッチ走リ回ル暗躍は、「媒体を通さなくてはならない宿命」がつきまとうmetaphorの気配である。(nautilus823)


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