Friday, July 08, 2022

碧空2315 nautilus866(誰も罰しようもなく業を深める)

2315 nautilus866(誰も罰しようもなく業を深める)  三門の半カルヴァン砲、八門の攻城砲、二門の野砲、トリストラムの叔父トウビーの野戦の空想が要求するこれら火砲を野戦のジオラマに供給するために、その材料をトリム伍長は、雨樋やら鉛管やら白鑞の洗面器やら、そしてたまたま子供部屋の窓の、鉛の分銅や窓枠の滑車から調達していたのであるが、その最後の即興的偶然の窓こそは、スザナーがたまたま尿瓶を用意し忘れた夜に、急遽トリストラムにそこから放尿させようとして持ち上げたら二人の上に落ちて来ることになる、悲劇の窓なのである。  トリム伍長は、「人差し指を一本水平に卓上に置き、もう一方の手のひらのへりで上から直角にその指をたたくというしぐさの力を借りて」すなわち、鮮やかに包丁を駆使して千切りする手並みを模写して、たまたま叔父トウビーがシュテーンケルクの戦闘とソームズ伯爵の不思議な行動のことを話してきかせていた司祭や生娘たちの前では憚られるような内情の報告を促進する。  沈黙や隠蔽を潔しとしないトリム伍長の、その自首と告白を促進するには、親指と人差し指や中指とを擦り合わせる焦れるようなうずうずするようなしぐさでも間に合うのだが、司祭と生娘たちの前での、その告白の強行は、司祭や生娘たちには何のことなのかよく呑み込めないように経緯そのものが韜晦していて、それがまるで告白の躊躇のようで、しかし、まるで自らを隠れなくして罰したいとでもいうような衝動が機会を狙ってうずうずしてもいるのである。  ところで、もしスザナーが尿瓶を用意し忘れなければ、もしトリム伍長が野砲の材料を子供部屋の窓から調達しなければ、もし叔父トウビーが野戦の空想をジオラマにしようなどと閃かなければ、もしトリストラムがあの夜にしこまれなければ、起こらなかった悲劇であるから、この、モシの連呼を中断して悪いのは誰だと決めつけるのは恣意的に過ぎる。偶然の玉突きの果てしなさは、誰も罰しようもなく業を深める。業は誰のものでもない。

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