碧空2331 nautilus882(淋しい起原)
2331 nautilus882(淋しい起原)
それは、あ・や・め、という音韻であったかどうかは疑わしい。しかし記憶を辿ろうとすると、それはまるで初めから知っていたように、しかしそれ自体後れて辿るようにあ・や・め、という音韻になって打ち寄せて来る。そんなふうにその佇まいは、あ・や・め、だと分かったのである。
つまり、それは、ナルキッソスが水仙となって生える如く植物に姿を変えてしまったと衝動的に伝えたくなるような淋しい起原を孕んだ佇まいなのである。
私がそれまで見たことのない花が水辺に一本佇むのを初めて見たとき、というよりも私が見つけられたとき、奇妙ニモ、私はそれがあ・や・め、だと分かったのである。漫画のノリで言えば、唖然とした表情を描くのを省いて顔に「唖然」と漢字で書いてすますみたいに、あ・や・め、と花びらの短冊にひらがなで書いてあったようなものである。従って、この記憶はまるで疑わしいのであるが、疑わしい以上の何かが気配づいている。例えば、既視感が分節しようと焦るような惑わせる何か、しかし魅する何かである。
私の顔は、額を落雷の如く直撃する電波がアースされない位置異常のモーゼの顔のように光っていたはずだし、あ・や・め、は異常接近した私には光る声なのに他の誰にも聞こえない。


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