碧空1604 nautilus555(アルヌー夫人の変身の場合)
1604 nautilus555(アルヌー夫人の変身の場合)
異性を尋ねて隠沼を尋ねてしまうように、フレデリックはアルヌー夫人を尋ねて夫人が触れる身の回りのなにもかもを尋ねてしまう。夫人の住む街の何処もかしこも、パリの至る所にアルヌー夫人が宿ってきらきら光り出すのである。(「情操教育」G.Flaubert)
恋は、異性と場所(この世)を同じと見なすcategoryであるし、その種の浮上は「私」の危機である。それは、トランシルバニアの山塊の狼がピレネーまで彷徨って漸く一匹の雌の狼に遠吠えが届くような神話的な冒険である。「私」を尋ねて種を尋ねてしまうのであるが、その雌の狼と遭遇するためにずっと彷徨っていたかに思えるにしても、そうだと見なすのは何かおごらないではいられないまでに小さくなっている「私」の危機なのである。
フレデリックは、アルヌー夫人の触れるなにもかもがアルヌー夫人を打ち消すまでにコピーして変態する魔法にかかる。この、アルヌー夫人の変身は、身の回りのなにもかもがアルヌー夫人にあこがれるように種と個の間のmetamorphosis のmetaphorなのである。


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