Friday, May 19, 2023

碧空1629 nautilus580(悪い虚構を何度ものぞきに戻る、不易なのに中止する「私」)

1629 nautilus580(悪い虚構を何度ものぞきに戻る、不易なのに中止する「私」)  あの、ばりばり音を立てて丸ごと炎上していた一軒家の上空に北斗七星が懸かっているのを立ち竦んで見ていた「私」、オトフケ川で誰かが溺れ死んだといううわさが漂っている午後に佇む「私」、それから川原君は何かを苦にした母親と秋祭の日に入水したのであるし、寺田君の脳味噌は道路の反対側まで飛んでいて顔も潰れていたがアイスキャンディも溶けていて、その寺田君とスイカ泥棒をはたらいていたとき母がその、宝来へ続く道路をやって来るのを「私」はぼんやり見ていた。  こうした「私」は、この、ここにいて悪い虚構を何度ものぞきに戻らずにはいない「私」と同じとはとうてい思えない。「私」とは連続の切断で、不易なのに違うのだ。そこからもっと先へは進めなかった川原君や寺田君のようにそこから一歩も動いていない偶然の「私」を、打ち消すまでにコピーする脱皮が、不易なのに中止する「私」なのであるが、この「私」はいつまでも中点に到達しない。記憶は、潜伏する中点が後れて来る「私」に変態するのである。

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