碧空3187 nautilus1530(幻鼻が疼く)
3187 nautilus1530(幻鼻が疼く)
癩病は何か奇にして何か偽り、何か迂闊なまでに悪い突出なのに、「私」でなくなるまでに鼻が崩れ、自由が崩れる。癩病は、「私」が秘密な矛盾を孕むことになる平等の隠喩である。
「私」のものの喪失は埋め合わせられるが、「私」のことの喪失は償えない。山幸彦がまるでわざとではないかのように失くした海幸彦の釣針がどうにも埋め合わせられないのは、その釣針が海幸彦の孕む秘密な平等を代表して行方知れないのに、崩れた自由を代表する幻鼻がなおも抵抗するからである。海幸彦が償え!ではなく、戻せ!と悲痛に叫ぶのは、「私」でなくなるまでに崩れた鼻を取り返せない苦悶からである。大海原から元の釣針を探し出すような難題を吹っかけるのも、幻鼻が疼くのである。
この幻鼻は山幸彦の顔面が写し取ってしまう。覗いてはならない産屋を山幸彦が禁止を破って、鱗に覆われた魚族のおぞましい姿を覗き見てしまうのは、鏡をのぞき込んだのである。


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