碧空3241 nautilus1584(隠れなさの変形)
3241 nautilus1584(隠れなさの変形)
「それはアンスル・ボルンという30歳の巡回牧師で、ある日(1887年1月17日)彼は銀行から551ドルの預金をおろし、突然グリーンから失踪、2ヶ月の間行方不明であった。この間彼はA.J.Brownと名乗ってペンシルベニアのノーリスタウンで小さな雑貨店を切りまわし、仕入れ万端を立派にやっていた。しかもこうした仕事はそれまでに一度もやったことがなかった。1887年3月14日、彼は突然覚醒して家に戻ったが、その間のことは完全に忘れていた」
下の方から首まで上がって来るメランコリーと引き換えられた551 ドルは絶妙の細部で、喝采したくなるような躁状態の精華である小さな雑貨商の日々を先取りしている。つまり、グリーンとノーリスタウンの、どちらの生活も、メランコリーと躁状態が斑状に、あるいは地層状に隣接して、区別がおかされるまでに振動しているのである。
しかし、グリーンの眠れない日々の続きは、ノーリスタウンの小さな雑貨商の日々の営みの突然の中絶を通して接がれる。この私的ではない空白は、眠れない日々の地層で猛烈な昏睡発作か冬眠発作が襲った痕跡であるが、よく眠れるように静かさや暗さが私的な距離に変換されてペンシルベニアまで運び去られ、失踪の中身である551 ドルが何か前生活を主張していて、手を叩きたくなる。
眠れなさは、隠れなさの変形である。「私」が麻痺する隠れなさの黙示で、眠ろうとしても下の方から首まで何かえたいの知れない疾しさが上がって来て、私的な静かさや暗さがはるか遠いのである。


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