碧空3246 nautilus1589(偶然というには狙撃的過ぎる閃光)
3246 nautilus1589(偶然というには狙撃的過ぎる閃光)
その夏、伊福部昭少年が単身帯広の駅に降り立って馬車に乗り込むと、音更へ続く落葉松の並木の(大名行列が通りそうな)長い一本道を進んだ。その途次、馬車の馭者が何を思ったか、オレハ谷口トイウノダ、と名乗った。
伊福部昭はゴジラのテーマで世に知られた音楽家、1914年釧路の幣舞で生まれた。伊福部家の系譜はオオクニヌシを宗祖とする因幡の古代豪族に遡る。
その夏の一隅の、一過性の痙攣発作のような閃光は、赤剥けになった因幡の素兎と通りかかったオオクニヌシの声帯を拡声器にして、敷浪打ち寄せる浜辺が大声で(腹話術で)何やら話しているかのようで、偶然というには狙撃的過ぎる。
オクラホマ劇場が劇団員を募集するポスターの傍らを通りかかって立ち止まったKarl(「アメリカ」F.Kafka )の、その、イヌのように嗅ぐ様子を眺めていた紳士が歩み寄って激励する。一体、下の方から首まで透明になっていく失踪は、極端に私的になるかに見えて、催眠術にかかったかのようになるのである。この、一過性の記憶喪失や不眠症のような閃光は、偶然というには狙撃的過ぎる。


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