Wednesday, August 07, 2024

碧空3272 nautilus1615(「オックスフォード」の咳払い)

3272 nautilus1615(「オックスフォード」の咳払い)  福沢諭吉は咸臨丸で太平洋を渡ったとき、カリフォルニアの地でオックスフォード辞典を購入したのだった。もう一度同じ人生をやり直してもいいと豪語する福沢先生は、もう一度咸臨丸で海を渡って同じ辞典を買い、既視感の如く、同じ頁を開いて最初の単語を探すのだ。  註 「オックスフォード」は、ウェブスターの記憶違いである。福沢の記憶錯誤ではなく、未来の「私」である他の誰かの記憶改竄であるが、さらには、「オックスフォード」が間違いであることの指摘は本来の「私」である他の誰かからやって来る。  この、まるで変身するような記憶改竄は思いがけないほど密かに、迂闊に起こっているかに見えて、本来の「私」や未来の「私」が他の誰かであることの迂闊なまでのミステリやスリルが、まるでうっかりではないかのように予期されている。実に「オックスフォード」は何か説明したがっているし、まるでそのことに気づいてもらいたくて目配せか、ゴホンと咳払いするかのようでもある。  コスモスを改竄して二つの月がぬっと出てしまう狢の月は、佐倉の竹林や湿地や印旛沼の含蓄であるが、「オックスフォード」の血統は、まるでオドラデクがゴホゴホ咳をしながらひょっこり出そうなのだ。

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