碧空3341 nautilus1684(渾身の威嚇、渾身の弱点)
3341 nautilus1684(渾身の威嚇、渾身の弱点)
不中用、と書いて漱石は、やくざと読ませている。
不中用は分業を打ち消すまでにコピーする憧憬であるから、分業のオートマチズムから逸脱するどころか逃れられない。その生態は、目には目を式の、あるいは提喩式の呪術が息づいている。足を洗うために指を切り落とすことは、指が一本身体を離れることを以て裏切りを模写、刻印する呪術である。しかも、残った身体が全体を代表して堅気になるというより、転がって戸惑っている指がプラナリアのように全体を再生して(あるいは、全体を兼ねて)別の階級へ旅立つのである。
しかし、指を一本失ったことは、取り消せない。復讐的!なのである。刺青は、この、取り消せない!が眼状紋のような渾身の威嚇となって目を瞠って脅かすのであるが、それは日常が知らない、しかしどこからともなく響いて来る悪!である。日常は、この、響いて来る悪!すなわち、あの大鴉の不吉な叫び(「The Raven」E.A.Poe)を眼状紋にして、しかし、眼状紋に関して麻痺とはいわぬまでも鈍麻している。
眼状紋は、日常の一体どこに潜むのだろうか。眼状紋は、暴露すると気味悪く迫る内臓や神経の如く日常が内蔵する、あるいは、日常が壁に影を思いがけなく写すような外蔵である。それは、日常の分業のオートマチズムに組み込まれているが、刺青や金属の光り物やもの言わぬ影の如く付加的、転移的、擬装的、衒奇的に余計なものになって、さらには渾身の弱点となって、あるいは腱鞘炎、あるいは偏頭痛や神経痛、あるいは胃痙攣、あるいは蕁麻疹、あるいは一過性の失明や失声や硬直となって遍在的に潜むヒステリア(放浪する子宮)である。


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