Monday, April 07, 2025

碧空3515 nautilus1858(覆う眠気)

3515 nautilus1858(覆う眠気)  咸平五年、建州ノ海賈周世昌風ニ遭ヒテ漂ヒ日本ニ至ル。凡ソ七年ニシテ還ルコトヲ得タリ。其ノ国人滕木吉ト至ル。上、皆之ヲ召見ス。世昌其ノ国人唱和ノ詩ヲ以ッテ来リ上ツル。詞ハ甚ダ雕刻ナレドモ膚浅ニシテ取ル所ナシ。・・・上、滕木吉ヲシテ持スル所ノ木弓矢ヲ以ッテ挽射セシム。矢遠キコト能ハズ。其ノ故ヲ詰ルニ、国中、戦闘ヲ習ハズト(宋史日本伝)  ゴロブニン船長の松前幽閉が解けたその年、ペテルスブルグの都から日本国への贈りものは、一個の時計だった。それは、発条を充たせば、川の如きものが横に流れ、馬首が出て来て水飼う工夫だった。  騾馬は、昔は支那より西に限られた。  柑橘の豊麗な地中海の処々には山が岸浜まで迫っていて、冬なお温和な白い浜と山の中腹の白い家並とを結ぶ坂道を、荷を振り分けた驢馬がひねもす往来している。その頃、山向うのローヌの平野には、ミストラルと呼ばれる北風が吹き荒れているという。  不断に限界を拡大する「私」の「私」の浮上、その、同時に異なる場所を占めるエネルギー状態の、その、何か忘れ果てた予言の成就の前触れだけが浅瀬に上がって置き去りにされたとでもいうような、眠気が覆う。世の片隅の、丘の上の病院に勤める若い医師は、病から症状が検索できる「若き医師の友」を改良して逆に症状から病が検索できる索引もつくりたいと日頃考えていて、この日はちょっとしたことから医師の間のくそ口論が起こって、街には雪が降りかかる。「神よ殿方をして楽しく息ましめたまえ」(E.Hemingway )を包むのは、この眠気なのだ。

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