Friday, May 23, 2025

碧空3561 nautilus1904(見得を切る猿面冠者)

3561 nautilus1904(見得を切る猿面冠者)  真にも偽にも不足であることを発作的に血管の膨張を以て模写してあからめた顔面を転写した「猿面冠者」の墓碑は、「死ぬまぎわまで嘘を吐いていた」である。(太宰治)  嘘を吐けば閻魔に舌を抜かれるのだが、嘘を吐いたかどうか予め検出する装置が墓地にはある。卒塔婆についた月の大きさの鉄の輪で、検体が鉄輪を回して、ひとしきり回ってからそっと止まれば潔白、止まりかけて逆戻りしてしまうのは恐ろしいことになる。  猿面冠者の生涯を、その時間を極端に拡大して、静止画像になるまでに拡大した究極の劇化は、見得を切る所作となって精練される。曲がり角で思いがけなく女学生の一群に出逢って、狼狽からほとんど帽子を取りそうになる転移発作は、やがては、修学旅行の女学生がバスの窓から手を振って顔をのぞかせている、その一群の視線を一身に集めるとでもいうようなポオズ、すなわち東京八景に匹敵する珠玉の、というよりは別格の、淋しい光景(輪郭を死守しようとしてもみるみる姿を掻き消してしまう何か届かない光景)へと昇華して、不覚にも顔を赤らめるのである。

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