碧空3569 nautilus1912(誰にも知られない隠喩)
3569 nautilus1912(誰にも知られない隠喩)
色慾はさまざまに置換される。例えば、小説の技術である。
「すかしたり、なだめたり、・・・威したりしながら話をすすめ・・・なにかしら意味ふかげな一言とともにふっとおのが姿を掻き消す。」全く掻き消してしまうのではなく、「素早く障子のかげに身をひそめて」うかがうまめな精進である。(「玩具」太宰治)
例えば、気が狂う技術である。それは、麦畑にひそむ赤い馬と黒い馬ほどにも分からない隠喩、誰にも知られない隠喩である。
「私は誰かのふところの中にいて囲炉裏の焔を眺めていた。焔は、みるみるまっくろになり、海の底で昆布の林がうごいているような奇態なものに見えた。緑の焔はリボンのようで、黄色い焔は宮殿のようであった。けれども、私はおしまいに牛乳のような純白な焔を見たとき、ほとんど我を忘却した。」この子はおしっこをたれるたんびにわなわなふるえる、と誰かが呟く。「私は、こそばゆくなり胸がふくれた。」それはきっと帝王のよろこびを感じたのだ、とされる。それは、この「私」が枕元のだるまと言葉を交わすことや、おとながみんな寝静まったころに、家中を駆け巡る四、五十匹もの鼠や畳の上を這い回る四、五匹もの青大将が寝床のなかにまで入っていく光景と、同じだとされる。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home