Tuesday, June 17, 2025

碧空3586 nautilus1929(あの刹那の鱗、あの一滴の露)

3586 nautilus1929(あの刹那の鱗、あの一滴の露)  長い長い津軽の夜伽話によれば、 山中に橡の木が一本あって、その天辺にカラスが一羽来て止まり、 カラスがガーと鳴けば橡の実が一つぼたんと落ちる。 また、カラスがガーと鳴けば橡の実が一つぼたんと落ちる。 また、カラスがガーと鳴けば橡の実が一つぼたんと落ちる。 ・・・  鏡ヶ浦に出ると、浜に魚が上がって来るので、投げ返してやる。 すると、やがてまた浜に魚が上がって来るので、投げ返してやる(さっきの魚なのだろうか)。 するとまた、浜に魚が上がって来て(さっきの魚なのか)投げ返してやる。 ・・・  「私」を尋ねて、悠久に出る。逃げ場はない(nowhere to hide)。  盆踊りの宵に村の若者は、想いを懸ける娘が腕を振り上げた刹那、袖の隙間から腋にびっしり鱗が生えているのを見てしまう。若者は遁走し、娘は大蛇に身を翻して追跡する。若者は道端の百合や、水に浮かぶ鴨や、さまざまに姿を変えるが躱せない。まるで、その変身のアイデアが大蛇の誘導であるかのようで、終には、降ろしてある釣鐘のなかに身を潜めるまでに追い詰められる。瞋恚の火群をあげる大蛇にぐるぐる巻きにされて、しかし若者は灰になるのではなく、ぽっちり露になる。(曽谷本道成寺)  大蛇は空しく去るのではなく、もう一人の若者になって娘を尋ねる。そして、あの刹那の鱗に、あの一滴の露に出る。誰も見つけに来ないまでに「私」に出る。若者は「私」から遁走するのである。

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