碧空3594 nautilus1937(絶対の選抜)
3594 nautilus1937(絶対の選抜)
絶対の抜擢は生贄であるが、通俗の語彙に解消した生贄を辿れば、それは絶対の抜擢の歴史のようなものになる。しかし、絶対の抜擢が身を窶すのは、生贄だけではない。というより、絶対の抜擢はむしろ生贄や身代わりではないかのように身を窶しているし(鱗翅を広げると見開く眼状紋を本体は終に見ることがないように)そうであることを知らない。
本ノ鉤ヲ得ンと難題を吹きかけられる山幸彦の危機は、誰も見つけに来ない海底のOctopus の如く一体の種の如き開眼であって、その、鉤探しの下降は、絶対の選抜である。後に禁忌の産屋を覗いておぞましい魚族の、その全身に鱗が生えた姿を見てしまうのは、種と個の中間の(罪と罰の中間の)秘密を告解して他の誰かの秘密にするのである。種と個の海の如き中間に呑み込まれたアノ、アノ時の鉤の探索は、山幸彦が何か本の魂のようなものを尋ねるのである。
ところで、この、一体の種の如き絶対の選抜は、孤独を打ち消すまでにコピーするメランコリーをひそめた魅惑である。シャムの双子が弓矢と鉤を魂の如く交換して山幸彦が海幸彦の釣針を魂の如く紛失するのではなく、癩病に罹って鼻が崩れていく山幸彦に(海底に沈むような山幸彦に)海が、何ヲ嘆イテイル!と声をかけるようにして山幸彦が呼び出される展開も、一つの面白味である。


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